どんな料理か
甜不辣は、揚げた魚のすり身を薄切りや棒状にしたものです。漢字は「甘くて辛くない」と読めますが、意味ではなく音で選んだ字で、日本語の「てんぷら」に響きを似せています。台湾の多くの地域では、甜不辣を頼むと大根や豬血糕(豚の血入りもち米ケーキ)などと一緒に盛られ、とろりとした甘いたれがかかって出てきます。基隆では、ふつう揚げたすり身だけを指します。
生い立ち
この軽食は日本統治時代(1895〜1945年)に伝わりました。関西では魚のすり身を揚げたものを「てんぷら」と呼び、関東では薩摩揚げと呼びます。台湾の人々はこの言葉を音の近い漢字で甜不辣と書き、衣をつけて揚げた魚介や野菜という広い意味の天ぷらと区別しました。天婦羅という表記も使われ、とくに基隆で見られます。「てんぷら」という言葉自体は、ポルトガル語のtemperoと、四旬節に肉の代わりに魚の揚げ物を食べた宣教師たちに由来するとされるのが一般的です。
詩人で食文化作家の焦桐氏は、甜不辣、天ぷら、黑輪(おでん)を、植民地時代が残した混血の食べ物に数えています。始まりの地の候補として挙げるのは、基隆の廟口にある廟前の屋台です。
作り方
魚のすり身に小麦粉またはでんぷん、塩、砂糖、調味料を加えてよく練り、なめらかで弾力のある生地にします。それを平たい薄切りや棒状に整えて揚げます。焦桐氏は2007年の文章で、ほとんどのすり身は鮮度の落ちた雑多な魚を使う卸売工場製だと嘆きました。そのうえで、小型のサメとアナゴを片栗粉、砂糖、味噌、化学調味料と一緒にすりつぶし、注文を受けてから揚げる基隆の屋台をほめています。盛り合わせにする場合は、揚げたものをさらにやわらかくなるまで煮込みます。
食べ方
基隆の廟口では、揚げた天婦羅を甜辣醬(甘辛いチリソース)につけ、薄切りのきゅうりの漬物と一緒に食べます。ほかの地域で甜不辣を頼むと、すり身、大根、豬血糕の盛り合わせが出てきます。揚げ豆腐や肉団子が入ることも多く、上からたれをかけます。この盛り合わせを關東煮(日本式のおでん)と呼ぶ人もいるので、注文の際はどちらのスタイルか伝えましょう。
台湾各地では
- 北部
- 基隆で甜不辣や天婦羅といえば、ふつうは揚げたすり身だけのことで、大根や豬血糕を期待していた旅行者は驚くかもしれません。廟口の16番の屋台、王記は1956年の開業です。
- 南部
- 南部では、日本語の「おでん」から来た黑輪という名前で魚のすり身の棒を呼ぶのが一般的です。焦桐氏によると、北部のものの大きさは南部のおよそ四分の一。南部の屋台では大きな棒を炭火でふくらむまで焼くこともあり、屏東の潮州には新鮮な旗魚(カジキ)を使う屋台があります。

